尾骨の痛み

尾骨(尾てい骨)はお尻の下側中央、仙骨下側の先端にあり、
3~5個の小さな骨がくっついたような状態になっています。
尾骨の痛みは、お尻中央の一番下側の中心に感じることや、左右どちらかに偏っている場合があります。
尾骨の痛みで原因がはっきりしているものでは、「尻もちをついた」、「出産後」など尾骨部に強い力や衝撃が加わったことが挙げられます。

 

それ以外でもはっきりした原因は思い当たらないけれども、尾骨の痛みに悩んでいるという場合もあります。
デスクワークや自動車の運転などで、長時間座っていることの多いことなどが、尾骨の痛みと間接的に関わっているのではないかと考えられます。


***尾骨痛(尾てい骨の痛み)の針治療法***
骨盤内部はちょうどお釜の底ような形をしておりますが、お釜の底に当たる部分は完全に骨で覆われているのではなく、筋肉や靭帯などの組織によって覆われており、内臓の重さ、せき・くしゃみ、排便時の腹圧など、骨盤内部からの圧力を支えています。

そして、尾骨部にはその骨盤の底を支えるための筋肉などが付着しておりますので、尾骨に痛みを生じるのは、この筋肉が深く関係していると思われます。

 

この筋肉は、尾骨を通る身体の中心線で左右に分かれていますので、左右どちらか、問題のある方が痛むなど、尾骨の痛み方にも左右差が生じる要因と考えられます。


ただし、尾骨の痛みを訴えて来院される方の多くは、その原因がどうであれ、
尾骨周囲からお尻全体に、広い範囲で筋肉が緊張・硬化しているように思われます。


お尻の下層部にある複数の筋肉は、全体的に骨盤の底部を支えるために働いており、それらの筋肉が疲労蓄積などの原因で緊張・硬化して骨盤の底部を支えきれなくなった結果、骨盤内にかかる負担が底の部分に集中して、尾骨の痛みを引き起こすのではないかと考えております。


従いまして、尾骨痛の治療の際は、尾骨周囲のみに限らず、殿部(お尻)全体の筋肉の緊張・硬化を緩和させる必要があると考えており、実際に成果を挙げております。


#長時間の座位と尾骨の痛み
*デスクワーク・自動車の運転など、
『座っていて尾骨が痛くなるのは尾骨が直接椅子に当たるから?』
デスクワークや自動車の運転などで座っていて、尾骨の痛みを感じる場合があります。
しかし、普通の椅子に「普通」に座っていれば、
骨盤の構造上、尾骨は椅子に当たるようなことはないと思います。
(痩せていてお尻の肉が薄い場合や、
元々から尾骨が後ろに出っ張っている場合は別ですが・・・)
「普通」に座っていて尾骨に椅子が当たると感じるようであれば、
「普通」に座っているつもりでも、無意識のうちに姿勢が崩れているかもしれません。
例えば腰を丸めて、骨盤を前方にスライドさせるような姿勢であれば、尾骨は椅子に当たりやすくなると思います。
その場合、なるべく腰や骨盤を起こした「正しい姿勢」を心がければ、尾骨が椅子に当たりにくくなり、痛みはかなり楽になるはずです。

 

しかしながら、いざ実際に「正しい姿勢」を心がけてみても、
それを維持するのは、なかなか大変なことではないでしょうか?


腰を丸めて尾骨が椅子に当たるような姿勢で座っている人の多くは、背中や腰などの姿勢を支えるための筋肉が、既に疲労・硬化していることが考えられます。
従って、「正しい姿勢」で座っていたくても、それが困難である。
・・・というのが座っている時の尾骨・肛門・会陰部痛に悩む方々に共通する特徴ではないかと思います。


その場合、尾骨周囲の治療と同時に、背中や腰など、姿勢を支えるための筋肉の状態を改善させ、「正しい姿勢」を無理なく維持できるよう治療をする必要があります。


同時に、円座などのクッション等を上手に利用して、
椅子に座る際の尾骨に対する物理的な刺激要素を出来るだけ取り除くとよいでしょう。


では、尾骨が椅子に当たらない姿勢を心がけ、円座などを使っても尾骨が痛む・・・という場合はどうでしょうか?


「尾骨が椅子に当たる」という物理的な要素を極力取り除いても、
なお座っていて尾骨・肛門・会陰部の痛みを感じるという場合もあると思います。


当院では、尾骨・肛門・会陰部痛と関連の深い殿部(お尻)全体の筋肉の緊張・硬化は、デスクワーク・自動車の運転など、長時間の座位による、姿勢保持のための筋肉の疲労・硬化の影響で引き起こされると考えております。

 

背中や腰の筋肉疲労・硬化が殿部(お尻)の筋肉にシワ寄せのように負担となり、殿部(お尻)の筋肉の緊張・硬化を増強させてしまうのです。

 

従いまして、殿部(お尻)周囲の他、背中や腰など姿勢保持に関係する広い範囲の筋肉の状態を改善させることが、尾骨の痛みを治療する際のカギになると考えております。


#「尻もち」などによる殿部(お尻)への衝撃と尾骨の痛み
打撲の痛みが長い期間ずっと続いている・・・
骨折は治ったはずなのに痛みが残っている・・・
「尻もち」などのお尻への強い衝撃を起因として、尾骨・肛門・会陰部の痛みに悩まされる場合も多くあります。


尻もちなどの直後は打撲の痛みが強く、痛み方によっては骨折の心配もありますので、なるべく安静にして病院での検査を受けた方がいいと思います。

 

しかし、
①骨に問題はなく、ただの打撲のはずなのに、時間が経過してもなかなか痛みが治まらない。
②骨折だったが、月日が経過して骨はもう問題ないはずなのに、痛みが治まらない。
というような場合、
「尻もち」などのお尻への衝撃が原因で発生した、尾骨周囲の筋肉や血液循環などの問題が解決されていないために、痛みが長引いている可能性があります。

 

従って、尾骨周囲の筋肉の状態(硬化)と血液循環を改善させればよいのですが、直接ぶつけた尾骨周囲ばかりではなく、ぶつけた衝撃がお尻全体に広がる・痛めた尾骨をかばうなどの理由で、殿部(お尻)が広範囲にわたって硬くなってしまっている場合も多いので、治療は広範囲に行った方が尾骨の痛みも改善させやすいと思います。

 

また、尾骨の打撲や骨折の後、痛みも一旦治まったのに、数週間~数年の後、尾骨周囲の痛みが再発するという場合も少なくありません。
極端な場合では数十年後に再発する例もあります。


もちろん、それだけ長い期間が経過していれば他の要素も原因として関わっていると思いますが、
本人でもすっかり忘れてしまっている場合が多く、私から指摘され、
昔に強烈な尻もちをついたことがあったことを思いだすような場合すらあります。


#出産と尾骨の痛み
・出産して間も無く尾骨が痛みだした・・・
・出産からしばらく月日が経って尾骨や肛門・会陰部が痛みだした・・・

など、出産後や出産後の子育て中に尾骨・の痛みを訴える場合も多くあります。
考えられる原因は複数あります。


①妊娠

妊娠の際、骨盤は通常より広がります。
加えて胎児の重さを支えなければならないので、
骨盤の底を支える筋肉の負担になりやすいです。


②出産

出産で赤ちゃんが産道を通る際、尾骨は物理的に大きく押されますので、直接尾骨を傷めることや、尾骨周囲の筋肉や靭帯を傷めることがあります。


③出産後の子育て

出産後から子育てをしていて痛みが強くなってきた場合、妊娠・出産で骨盤が広がったことに加え、

おむつ替えや入浴など無理な体勢になりやすい・・・・
授乳や寝かしつけで赤ちゃんを抱っこしたまま、同じ姿勢で座ったまま・・・

など、子育てなどの負担で身体に疲労が蓄積し、結果的に痛みが引き起こされたと思われます。


以上①②③の要素が単独で、または複合して
妊娠・出産に伴う尾骨の痛みを引き起こすと考えられます。


また、座るときには円座を使うなど、尾骨周囲を圧迫し続けないよう気をつける。
骨盤ベルトなどをうまく活用して負担を軽減させる。
腹圧が強くかかるとよくないので、便秘にならないように気をつける。
等等、日常生活での注意も必要です。


#足を強く踏み込むと痛い場合
これは足を強く踏み込んだ際、尾骨につながる骨盤の底の筋肉に強い力がかかるからです。
そして、足を強く踏み込んだ際に主に骨盤・股関節を支える殿部(お尻)全体の筋肉が、元から疲労・硬化していた場合、骨盤の底の筋肉に余計に負担をかけることになると思われます。


#前立腺と尾骨の痛み
「前立腺の痛みについて」のページを参考にしてください。
前立腺の痛み


#尾骨の痛みと下半身の痛み・シビレ

尾骨の痛みを訴える方の中には、尾骨の痛みと同時に、お尻の下や太もも、足の付け根などが痛んだり、足のシビレを感じたりしている場合があります。
これらの随伴症は意外と多くみられますが、多くは尾骨痛に関連した症状となり、尾骨痛の治療と一緒に治療することができます。


①お尻の下や太もも、足の付け根の痛み
尾骨周囲痛に関連する骨盤底(坐骨部)・骨盤内部・股関節部に付着する筋肉の緊張によって、痛みを発することがあります。
ほとんどは尾骨の痛みの原因となる筋肉と共通または関連が深いので、尾骨の痛みの治療と同時に治療することが可能です。


②足の痛み・シビレ
尾骨痛に関連する骨盤底部の筋肉の緊張によって、そこを通る坐骨神経などの神経が圧迫刺激されてしまうと、すねやふくらはぎ、足の裏などの神経痛が引き起こされることがあります。
尾骨痛の随伴症状として意外と多くみられます。
これらの症状は、尾骨の痛みと並行して治療を行うことが可能です。
ただ、シビレが強い場合には腰椎椎間板などの異常も考慮し、慎重な対応が必要となる場合もあります。

参考:→坐骨神経痛


#尾骨の痛みQ&A
Q1:尾骨の痛み→腰・背中の痛み
尻もちで尾骨が痛くなったのですが、
時を開けずに腰や背中も痛くなってしまいました。何か関係がありますか?


A:尻もちなど、殿部(お尻)への衝撃をきっかけに尾骨の痛みが引き起こされ、更に時間の経過と共に、腰や背中の方まで痛みが出現する場合があります。
これは、交通事故などの際のムチウチがお尻の方向から起きたようなもので、
殿部(お尻)に受けた衝撃が背骨に沿うような形で腰・背中に伝わったためと考えます。
その際には、腰・背中の筋肉は緊張状態にあると思われますので、腰・背中の部位に適切な治療を加えます。
参考・関連項目:→背骨の痛み

 

Q2:尾骨痛治療過程での背中の痛み。
尾骨の痛みで治療を受けていたのですが、腰や背中に痛みを感じるようになってきました。
尾骨の痛みはよくなっていると思うのですが・・・なぜでしょうか?


A:尾骨痛の針灸治療を行う過程で、尾骨の痛みが減弱するのに伴って、腰や背中の痛みが生じる場合があります。
これは元々、腰や背中の筋肉緊張はあったが、尾骨の痛みが強かったためにそれを感じず、尾骨の痛みが薄らぐことによって、腰・背中の痛みを感じるようになったと考えられます。
腰・背中の適切な治療を行えば大丈夫です。
なお、尾骨の痛みだけ改善させて、腰や背中の緊張状態は放置しておくと、尾骨の痛みがぶり返す可能性が高くなりますので注意が必要です。


Q3:治療はお尻を全部出さなければいけないのですか?
A:お尻全体を露出させる必要は特にありません。
尾骨の痛み治療の際には、骨盤の底で尾骨につながる筋肉の状態改善を主な目標にしておりますが、実際に治療を加える(針をする)場所は、殿部全体の筋肉(骨盤や股関節を支持する筋肉)を対象としておりますので、ズボンなどの上か下を半分ずらす程度の露出でお願いしております。
通常は側臥位(横向き)or伏臥位(腹ばい)の態勢で殿部の治療を片方ずつ行います。

従って、緩めの半ズボンやスパッツなどを持参いただけますと治療がやりやすくなります。なお、着替えの用意がない場合は当方でも用意してありますので、ご安心ください。


#追加・治療の現場より
女性の場合、痛みと生理周期に連動性がある場合、婦人科方面のチェックが必要と思われます。


#余談:尾骨の形状個人差と治療のポイント
正常な尾骨の形状は、根元から先端に向かって前側(腹側)に緩やかなカーブを描き、左右への偏りもない状態です。
この緩やかなカーブというのがミソで、これによって、座面などに尾骨が当たった際に、その負担を吸収してくれるのではないかと考えています。
しかしながら、特に慢性的な尾骨の痛みを訴える方の尾骨の形状を調べますと、以下に挙げるような特徴がみられる場合があります。


*まっすぐタイプ
このタイプは尾骨が指をまっすぐ伸ばしたように、ピンと突っ張っているような状態になっています。
そして、尾骨の先端が座面などに当りやすくなって、ちょうど突き指のようにして、尾骨の周囲のスジを痛めてしまいやすいようです。
このようなタイプの方は、背中から腰にかけて、背骨に沿って姿勢を支える筋肉(つまり背筋)の緊張が強い場合が多いように感じます。


*折れ曲がりタイプ
このタイプは、尾骨が極端に前側(腹側)折れ曲がっているタイプです。
尾骨の先端が食い込むようにして痛みを発している場合も多いようです。
このタイプの方の座った姿勢を見ると、背中が丸まって、骨盤が後ろに傾き、骨盤中央の仙骨部分が後ろに突き出してくるような姿勢であることが多い印象があります。
背中や、骨盤部など、座った姿勢を安定保持させる筋肉を改善させ、尾骨への負担を軽減させる必要があります。


*左右片寄りタイプ
尾骨先端が右か左のどちらかに片寄っている場合です。
まっすぐタイプ、折れ曲がりタイプと合わさっている場合もあります。
尾骨周囲につながる骨盤底部の筋肉の緊張において、左右差が顕著である場合や、骨盤が左右に傾いているなどの原因が挙げられます。
骨盤底部の筋緊張を緩めたり、腰部、骨盤部の筋バランスを調えて、骨盤の傾きを調整するなどの必要があります。

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