股関節痛

股関節痛(おしり・そけい部・太もも付根)の針灸療法

【目次】

(1)股関節と股関節の痛み
(2)股関節痛を引き起こす要因
(3)股関節痛の針灸施術
(4)股関節痛に関連した部位の痛みや施術過程での変化について
①腰、②お尻の下、③太もも裏、④膝、⑤前太もも、⑥尾骨部
(5)デスクワーク・運転などの座った姿勢と股関節の痛み


(1)股関節と股関節の痛み
股関節は骨盤と、大腿骨によって構成される関節です。球状になった大腿骨の先端が、骨盤側面にある臼状の窪みにはまり込むような状態になっております。関節部の骨と骨の連結は靭帯によって補強されておりますが、股関節は可動範囲の広い関節ですので、その動作と安定性保持のために、多くの筋肉が関わっています。股関節の痛みは、それらの筋肉の異常によって生み出されていることが少なくありません。股関節の痛みは、他の関節の痛みの場合と比べて、どの部分が痛いのかはっきり分からない場合が多いような印象があります。多くは、おしりの奥の部分の痛みを訴えたり、そけい部(前太ももの付根)の痛みを訴えたりします。このように痛みを感じる位置が定まりにくいのは、股関節の位置が「おしり」の奥の部分に位置する関節であるからだと思います。そして、「おしり」の表面から奥まで、何層かの筋肉が股関節の周囲を厚くおおっていますので、その正確な位置が把握しにくくなっていると思われます。
            
(2)股関節痛を引き起こす要因
上記したように、股関節は複数の筋肉によって、その安定性を補助されています。それらの筋肉が何らかの原因で硬化して、十分な機能を発揮できなくなると、股関節の安定性が低下したり、十分な可動性を発揮できなくなったりします。その結果、股関節の負担が増大し、痛みが引き起こされると考えられます。従いまして、股関節痛の施術を行う際には、股関節周囲の筋肉の状態を把握し、問題がある場合には施術を加え、硬直をゆるめることで、股関節の痛みを軽減させることができると考えております。
          
(3)股関節痛の針灸施術
まずは、股関節の動きや安定性に直接に関わるおしりの筋肉から、痛みの原因となる硬化した筋肉を探し出して施術します。また、大腿(ふともも)の前面・後面、腰部から骨盤につながる筋肉など、股関節の動きに関係する筋肉の状態も調べて必要なら施術を加えます。同時に、腰部、背部などの姿勢保持の筋肉に疲労・硬化がある場合や、ふくらはぎ、すねの筋肉が硬化している場合も、それらを緩めることで股関節への負担を軽減させます。特に股関節の動作と安定性保持のための筋肉の状態を丁寧に調べて異常の存在する部分を的確に施術することがポイントになります。ただし、おしりの筋肉は、複数の層に分かれ、表層部の筋肉が比較的厚いのに対して、股関節の安定性と動作のコントロールに密接に関わる深層部の筋肉は細かいため、それらの状態を体表から把握し、施術を行うためには、勘と経験による的確な技術が要求されます。
             
(4)股関節痛に関連した部位の痛みや施術過程での変化について
①腰と股関節痛
股関節と腰の関係は深く、切っても切り離すことができません。人間の上半身は、背骨とその周囲の筋肉によって支えられ、その荷重は腰部を経由して骨盤において左右に分かれ、股関節から足へと伝達されます。従って、普段から腰部の負担が大きく、腰の筋肉に疲労が蓄積されている場合、股関節にも過剰な負担を強いてしまう場合が少なくありません。従って、股関節の痛みを発症する前に、腰の痛みや重だるさを自覚していた例も珍しくはありません。
また、股関節の施術が順調に進み、股関節の状態が好転するにつれて、場合によっては、腰の痛みを自覚するようになることがあります。これは元来、股関節の状態が悪化する前に、長時間ののデスクワークなどによって腰の負担が大きく、それをかばうようにして、腰の負担が股関節周囲に転嫁されて股関節の痛みが発生していたためと考えられます。そのため、腰の痛みを自覚することになっても、それは股関節の痛みが回復して、もともと悪かった腰の状態を自覚できるようになったとも言えますので、心配せず、引き続いて腰のケアを行えば解決でき、股関節痛の再発予防にもなります。


②おしりの下の部分の痛みについて
股関節の痛みについて、本人でもなかなか詳しく表現できない場合が多いのですが、お尻の下の部分、お尻と太ももの境目の辺りが痛いという場合もあります。これは坐骨(座った際に骨盤の底を支える後方にやや突き出した骨)の周囲からの痛みである可能性があります。坐骨の底の部分には、太ももの裏の筋肉が複数つながっております。それらの筋肉が元々疲労・硬化していたり、座位の際に圧迫され、血行が悪くなったりなどして、痛みを発している場合が考えられます。それらの筋肉の状態を回復させることや、座った際の姿勢を注意することで解決できます。※なお坐骨周囲の痛みについてはこちらも参考にしてください。


③太ももの裏や内側の痛みについて
股関節の痛みと同時に、または股関節痛の施術を進めていく過程で、太ももの裏や内側の痛みを訴える場合があります。この場合、太もも裏や内側の状態は硬く張っていることが多く、また、太もも裏や内側の筋肉は股関節の動きやバランスに関係するため、このような場合、これらを緩める必要があります。デスクワークや自動車の運転等、座った姿勢を主とした生活や仕事をしている場合には、太ももの裏が常に椅子の縁に当たる状態になりやすいので、圧迫から血行が悪化しやすいのも特徴です。※なお太ももの裏や内側の痛みについてはこちらも参考にしてください。


④膝の痛みについて
股関節痛を訴える方の中には、同時に膝の痛みを伴っている場合も少なくありません。また、股関節痛の施術過程で、膝の痛みが出現する場合もあります。股関節と膝関節は密接な関係にあり、例えば、股関節が硬化している場合には膝関節の負担も増しますので、膝痛が発生しやすい状況になっております。また、股関節周囲と膝関節周囲を結ぶ筋肉の硬化なども関係します。従って、股関節と膝関節の痛みは多くの場合、同時に施術することができます。※詳しくは膝痛の項を参考にしてください。

 

⑤太ももの前面や側面の痛みについて
股関節の痛みと同時に、または股関節痛の施術を進めていく過程で、太もも前面や側面の痛みを訴える場合があります。その多くは太もも前面や側面に硬化がみられます。それは股関節の痛みをきっかけとして、またはそれをかばうために、立位、歩行時などの身体の重心バランスが変化したために起こる場合もありますし、股関節周囲のお尻の筋肉が硬いため、歩行のさいなどに大腿(ふともも)への負担が増したためなどが考えられます。 施術は股関節と同時に行います。

 

⑥仙骨・尾骨部の痛みについて
股関節の痛みと同時に、骨盤の中心にある仙骨・尾骨部分が痛むという場合もあります。股関節痛を引き起こす原因となる、お尻の奥や底の筋肉は、仙骨と尾骨の付根の辺りにつながっているため、それらの筋肉の緊張が強くなることによって、仙骨・尾骨への緊張が強まり、痛みが引き起こされることがあります。股関節痛に伴った仙骨・尾骨痛の原因は、股関節痛とほぼ共通するため、お尻の奥や底の筋肉緊張を緩和させ、痛みへの影響を軽減させます。※詳しくは→仙骨痛または→尾骨痛のページを参考にしてください。


⑦股関節痛と坐骨神経痛(足のシビレ・痛み)
股関節の痛みに伴って坐骨神経痛が発生することがあります。
ほとんどの場合、メインは股関節痛であるが、多少は足の方も痛む(しびれる)というようなケースです。
股関節痛に伴う坐骨神経痛の原因は、多くは股関節周囲の筋肉の緊張によるものです。特に、お尻の奥のインナーマッスルの緊張によって、坐骨神経が巻き込まれ、刺激を受けますので、足の痛み(坐骨神経痛)が引き起こされやすくなります。 針灸施術は、股関節痛の施術に並行し、股関節周囲の筋肉の緊張を緩めることができれば、坐骨神経痛の痛みは自然に終息していることがほとんどです。ただし、坐骨神経痛の痛み(しびれ)が激しい場合は、腰椎の椎間板ヘルニアなどを発症している可能性もありますので、整形外科などの受診をおすすめします。参考:→坐骨神経痛のページ
          
(5)考察:デスクワーク・運転などの座った姿勢と股関節の痛み
股関節は動作範囲の大きい、歩行などで日常よく使う関節ですので、歩き過ぎなどの使い過ぎで痛みを引き起こしやすいと思われがちですが、普段、あまり股関節を動かすことのない、デスクワークや自動車の運転などの環境にあっても、股関節の痛みを訴えて来院する場合が多いのも特徴です。座った姿勢で長時間作業をすると、まず、背中や腰など、姿勢を支える筋肉への疲労が徐々に蓄積されます。疲労がピークになると、今度は姿勢の維持にお尻の筋肉が働く割合が多くなり、その疲労もピークとなれば、股関節周囲の硬化を引き起こします。また、お尻の下の椅子に接する部分の筋肉は、体重の圧迫を受けて、血行が悪くなり硬化しやすく、特に深層部の股関節の支持に働く重要な筋肉がダメージを受けてしまいます。そのような状態で、股関節は八方塞がりの状況となり、歩行や階段の昇降など、日常的な動作でも大きな負担を受けてしまい、結果、股関節の悲鳴ともいえる痛みを発生させると考えています。

#関連項目
股関節痛・そけい部の痛みに関連することが多い部位(痛み)の針灸施術の解説です。股関節の症状に加えて気になる部分(痛み)がありましたら、こちらもご参考ください。


恥骨の痛み
坐骨周囲・内股の痛み
仙骨の痛み
尾骨の痛み
坐骨神経痛
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