緊張の肩こり・自律神経の肩こり

自律神経緊張の肩こりと針灸療法

(2)緊張の肩こり
キーワード:緊張・自律神経・ストレス・環境・天気・呼吸・背骨

<チェックポイント>
・首、肩、背中などの「張り」が強い。
・もんでも解消しない、強くもまれると「もみ返し」をおこしやすい。
・ストレス・イライラなど心の緊張が影響する。
・ひどくなると頭痛やはき気を伴いやすい。
・睡眠に影響しやすい(不眠、くいしばり)

<緊張の肩こりとは?>

例えばスポーツなどの試合や習い事の発表会などの前、緊張して身体がガチガチになった経験はないでしょうか?プレッシャーで緊張すると身体がガチガチになるのは、自律神経が緊張するからです。
肩こりも同様です。自律神経が緊張した状態では、筋肉は硬直し肩こりが引き起こされやすくなります。これが『緊張の肩こり』です。

<自律神経の緊張を引き起こす要因>
自律神経を緊張させる要因は様々あり、自身の身体・精神的要因の他にも、生活環境、自然環境などの周囲の要因にも影響される場合があります。それらの要因を総合的に判断して、肩こりへの影響を見極めることが大切です。

・内的な要因:ストレスや精神的疲労の蓄積、睡眠不足、内臓の不調・変調、血圧、冷え症、月経周期、更年期障害など。
・外的な要因:天気や気圧・気温の変化、季節の変わり目、季節外れの天気、災害など。
・生活的な要因:進学・就職・引っ越し・転職・職場異動など生活環境の変化。

*自律神経の一時的な緊張と持続的な緊張
自律神経の緊張には一時的な緊張と持続的な緊張があり、慢性的肩こりに関わりやすいのは自律神経の持続的な緊張です。また、自律神経の一時的な緊張は、元々慢性的な肩こりのある場合では悪化の要因となります。

<緊張の肩こりの特徴>
「緊張の肩こり」は強く揉まれると、ほぐれるどころか逆に悪化する可能性もあります。
なぜなら、肩こりの原因は自律神経の緊張にあるため、筋肉の疲労や血流を改善させようとして押圧刺激を与えても、強い刺激、特に痛みを感じるほどの刺激は自律神経の緊張を解せないどころか、返って自律神経の緊張を強めてしまい、もみ返しによる筋肉の硬直や筋肉痛などに結びつくことがあるからです。つまり「力」で解決できるコリではないのが「緊張の肩こり」の一番の特徴です。そしてコリが強くてしつこいからと強い施術を求めると「揉み返し」を起こしたり、スジを傷めたりする可能性もあるので注意が必要です。
「緊張の肩こりを」和らげるには自律神経の緊張を和らげる必要があります。

<緊張の肩こりと針灸療法>
「緊張の肩こり」への施術のポイントは、自律神経の緊張をほぐすことです。

その自律神経の緊張ですが、上記したようにその原因には様々な要因が挙げられます。
どのような要因によって自律神経の緊張が引き起こされているのかを見極めて、適切な対応をすることが求められます。たとえば、冷え症への対応、胃腸への対応、睡眠の不調への対応などが挙げられます。

そして、当院において、施術に際しての手がかりとして特に重視しているのは「背骨の硬さ」と「呼吸が深さ」です。

*背骨の硬さ
「緊張の肩こり」の人に見られる特徴の一つとして、この背骨(脊柱)の硬直、つまり背骨の「しなり」の低下が挙げられます。
背骨(脊柱)は一個一個のブロック状の骨が積みあがって1本の柱になっています。
ブロックとブロックの間にはわずかながら動きがあり、それによって背骨(脊柱)全体で「しなり」を生み出し、スプリングのように負担の吸収・分散などが可能となります。一個一個の背骨は細かな筋肉がつながっており、その筋肉の弾力性によって背骨全体の弾力を生み出しています。
自律神経が緊張しやすいと、背骨の細かい筋肉が緊張・硬直しやすくなり、背骨の「しなり」が失われるケースがよくみられます。それにより、背骨による負担の吸収・分散がうまくいかず、周囲の筋肉に余計な負担をかけて肩こりを強くします。
この細かな筋肉の硬直をほぐし、背骨にしなりが戻ってくると、肩こりの緩解が感じられやすいのが「緊張の肩こり」の特徴でもあります。
針療法ではこの背骨をつなぐ細かな筋肉を的確にほぐし、背骨の弾力性を回復させます。

*呼吸の深さ
自律神経の肩こりの場合、呼吸が浅くなっているのが多く見られる特徴です。無意識的に呼吸が浅くなっている場合や、意識的に深呼吸しようとしてもできない場合があります。呼吸が浅くなると、酸素不足から筋肉には疲労物質が溜まりやすくなり、痛みに近い肩こりを自覚しやすくなります。
呼吸の際、胸郭周囲の筋肉と横隔膜(筋肉の膜)が「ふいご」のように動いて空気の出し入れを助けます。自律神経が緊張していると、胸郭周囲の筋肉や横隔膜も緊張し、「ふいご」の働きが弱まります。胸郭周囲の筋肉と横隔膜の緊張をゆるめ、呼吸をスムーズにすることで「緊張の肩こり」緩解につなげられます。また、横隔膜の緊張は背骨の硬さと関係するため、上記した「背骨の硬さ」を改善させると横隔膜の緊張が緩んで深い呼吸が楽になり、「緊張の肩こり」も緩解しやすくなります。

<まとめ>
自律神経の持続的な緊張を一時的にでも緩め、それによって負のスパイラルを断ち回復への足掛かりとするのが「緊張の肩こり」への対処の基本となります。自律神経緊張の緩解によって筋肉の緊張を緩和させると同時に、呼吸による酸素供給や血液循環を正常に戻し、筋肉内の環境を整えます。
また、針灸療法においては、背骨の周りや呼吸に関係する筋肉などから、「くさび」のように緊張の芯となっているようなポイントを見つけ出し、細かく丁寧にほぐすのがコツとなります。

【目次】

→はじめに
→(1)疲労の肩こり
→(2)緊張の肩こり
→(3)バランスの肩こり
→(4)3タイプの肩こりの相関関係

 

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