(1)疲労の肩こり
キーワード:筋肉疲労・疲労物質・血流・コリの根っこ・隠れコリ
<チェックポイント>
・首や肩を動かす時に制限や痛みを感じることがある。
・コリの強い部分を何かに押し付けてグリグリしたくなる。
・ストレッチ、体操、マッサージ、入浴で一時的に緩解する。
・コリをほぐしてもらってもだるさやコリ感が残る。
<疲労の肩こりとは?>
筋肉は使いすぎなどで疲労が蓄積すると、弾力性が低下して硬くなり、「コリ」となります。
そして筋肉の「コリ」は血流を悪化させ、それが肩こりの回復を妨げます。
疲労の肩こりに対しては、筋肉をほぐし、血流を良くして蓄積された疲労を解消させるのが基本です。
<筋肉の肩コリの落とし穴>
ところが、この筋肉疲労の肩こりで、なかなか解消されないか、一旦ほぐれても間もなく元に戻ってしまう場合がよく見られます。
これには2つの理由が考えられます。
①コリの根っこ(骨のコリ)
まずはコリの「根っこ」がほぐれていない場合です。
コリの「根っこ」とは筋肉が骨に付着している部分のことです。
筋肉は頭蓋骨と背骨、背骨と肩甲骨など、両端が骨につながっています。
この骨への付着部は負荷がかかりやすく、血流も悪くなりやすいため、「コリ」が溜まりやすく、解消されにくい特徴があります。
ですので筋肉の本体をほぐしても、骨への付着部の「コリ」は残ってしまう場合があります。
付着部の「コリ」が雑草の「根っこ」のように残ってしまうと、そこから再び「コリ」が広がって元に戻ってしまうということがあります。
また、骨への付着部は、解剖的にみると骨の隙間や骨の内側・裏側に入り込んでいる場合があり、表面からの施術では刺激が十分に届かず、「コリの根っこ」が残ってしまうことがあります。
②隠れコリ(インナーマッスルのコリ)
次に「隠れコリ」の存在です。
首~肩~背中にかけては大小の筋肉が重なり合うように存在しています。
それらの筋肉は、強調して働くことによって姿勢や動きの調整や、姿勢の維持を行っています。
疲労の肩こりの場合では、比較的大きな筋肉のコリは認識されやすく、表面から触れやすい特徴があります。
しかし、大きな筋肉に隠れた小さな筋肉のコリは表面から触れにくく、はっきりと認識しにくいため、見逃されやすい特徴があります。また、この小さな筋肉のある部位(深さ)は血液の供給が停滞しやすいため、疲労が蓄積され「コリ」になってしまうと自然に解消されにくい特徴があります。「隠れコリ」は、このような「インナーマッスル」と呼ばれる比較的小さくて深い部分にある筋肉から生まれやすいという特徴があります。
インナーマッスルは動きや姿勢の微調整を行っているため、「隠れコリ」が固着化した場合、動きや姿勢の微調整がうまくいかず、そのちょっとした違いが大きな筋肉への余分な負担を招き、疲労の増大から肩こりの再発につながりやすくなります。
*「コリの根っこ」と「隠れコリ」による肩こり「負のスパイラル」
「コリの根っこ」と「隠れコリ」、どちらも血流が悪いため回復が遅く、部位的に見逃されやすい存在であることが共通しています。
表面・目立つ部分の「肩こり」だけを一生懸命にほぐしても、「コリの根っこ」と「隠れコリ」の取りこぼしがあると、そこを根城として肩こりが復活する負のスパイラルが形成されてしまいます。ですので、「コリの根っこ」と「隠れコリ」を探し出してほぐし、負のスパイラルを断つことが、疲労の肩こり解消のために注意すべき点です。
<疲労の肩こりと針灸療法>
疲労の肩こり解消の基本は、筋肉をほぐすことと、血液循環の促進させることです。
首や肩には多くの筋肉が存在しています。
まずはその中でも、特にどの筋肉に疲労が蓄積されているのかを見極め、施術する必要があります。
知識・経験と正確な触診、そして目的部分(ツボ)に的確に効かせる技術が求められます。
特に骨の内側・裏側に入り込んでいる「コリの根っこ」や、大きい筋肉の裏側や骨の隙間に潜む「隠れコリ」を探し出し、ほぐします。それらに直接アプローチできるのが「針」の強みです。
また、針治療によって筋肉に微小な傷がつけられると、身体はその傷を修復させようとして周辺の血流を促進させます。
その血流促進によって筋肉内への酸素の供給や疲労物質の排出が促され、筋疲労(コリ)の回復が促されます。つまり「筋肉の中」からコリが解消されるのがハリ治療の特徴です。
但し、疲労物質の排出に時間を要するため、施術から1~2晩おいてからが実感しやすいという特徴があります。
従いまして、施術後の十分な休息・睡眠がしっかりとれた方がより良い実感が得られると思います。
また、冷えによる血流悪化も肩コリ解消を妨げますので、施術後は保温に気をつけることも重要です。
針の施術によって、「コリの根っこ」と「隠れコリ」というポイントをしっかりほぐし、「筋肉の中」から血流を促して疲労を回復させることによって、肩こりの負のスパイラルを断ち切るきっかけになるのです。
【目次】
→はじめに
→(1)疲労の肩こり
→(2)緊張の肩こり
→(3)バランスの肩こり
→(4)3タイプの肩こりの相関関係
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