(3)バランスの肩こり
キーワード:姿勢・土台・バランス
<チェックポイント>
・立っている時や座っている時、同じ姿勢をしていると感じやすい。
・横になると感じにくい。
・同じ場所がこりやすい。
・マッサージなどの効果は一時的(すぐに戻る)
・姿勢が悪い、身体が傾いている(とよく言われる)
・頭痛やコメカミの痛みを伴いやすい。
・マッサージを受けるとコリ感が強くない側が凝っていると言われる。
<バランスの肩こりとは?>
「肩こり」を生み出す首や肩の筋肉には、重い頭や腕を支える役割があります。
本来、力学的に無理のない「正しい姿勢」において、それら筋肉の負担は許容範囲内に収められるようになっております。しかし、そのバランスが崩れてしまったとき、筋肉のへの負担はかたより、負担がかたよった場所の「肩こり」を生み出しやすくなります。
この「バランスの肩こり」の場合、肩の「張り感」や「痛み感」を訴える場合が多い特徴があります。いわば負担のしわ寄せを受けた場所が悲鳴をあげているようなものです。
また、横になるなど筋肉に負担がかかっていない状態では筋肉の張り・硬さはそれほど目立たず、起き上がった筋肉に負担のかかる姿勢になると、筋肉の張り・硬さが目立つという特徴があります。
なので横になってマッサージを受けても「あまり凝ってないですよ」といわれることがあり、肩こり部分を強く揉みほぐすなど「力」で解決しようとしてもなかなか期待通りにはなりません。
なぜなら「バランスの肩こり」は身体のバランスが整わない限り解消することは難しいからです。
さらに、このような状態が長期に続くと、負担を受け続ける筋肉には疲労が溜まり、筋肉疲労のコリが形成されてしまいます。この筋肉疲労はほぐしてもらえば一時的には楽になりますが、根本のバランスがそのままなので、しばらくすると元の肩こりに戻ってしまう負のスパイラルが完成します。
<バランスの肩こりと土台>
例えば、テーブルの上で積み木を積み上げるときに、テーブルに傾斜があれば積み木をうまく積み上げることはできません。人体に置き換えれば、テーブルは土台である骨盤になります。骨盤がゆがみ、傾いていれば背骨もバランスよく積みあがるのが難しくなります。その結果、背骨を支える筋肉への負担が片寄り、負担の集中する筋肉にコリや痛みが生じやすくなります。
肩こりの起きる上半身のバランスをとりやすくするためには、土台である腰・骨盤のバランスを安定させる必要があります。
<バランスの肩こりと背骨>
・側弯
背骨には上半身の重さを支える支柱の役割があります。その背骨が側弯していると上半身の重さを効率よく下半身に送ることができません。そして、側弯部分の負担を支えようと周囲の筋肉に過剰な負担がかかるため、慢性的な肩こりの原因となります。
・ストレートネック(スマホ首)
本来の頚椎は適度に湾曲し、スプリングのように頭の重さなどの負担を分散しています。
顔を長時間下に向けた状態で作業を続けるなどを日常的にした場合、頚椎の湾曲が消失してストレートネックと呼ばれる状態になることがあります。ストレートネックの状態ではスプリングのような負担を分散する機能が失われ、頚椎を補助する筋肉の負担が増大して肩コリ(首コリ)の原因となります。
<バランスの肩コリと姿勢>
【上半身の前傾・猫背】
猫背のような上半身を前傾させる姿勢の場合、前方に傾く頭の重さを支えようと、頭の後ろから首の付根にかけてつながる筋肉群が過剰に働く必要があり、肩こりの原因となります。
また、パソコンなど座って前方を見ながら作業をする際に、上半身が前傾姿勢であると筋肉への負担が強くなります。
例えば
①椅子に座って真っ直ぐ背中を伸ばした状態から軽くお辞儀をするときのように身体を前方に少し傾けてみてください。
②その状態からパソコンの画面が見えるまでアゴをあげてみて下さい。
③アゴをあげたまま傾けた身体をまっすぐに戻してください。
いかがでしょうか?アゴをあげたまま身体をまっすぐに戻すと、頭は後ろに倒れて首が折れ曲がったような状態になっていると思います。つまり、上半身を前傾させ・かつ前方を見続けることは、常に首を後ろに折り曲げた状態でいるのと同じことになり、頚椎と頚椎を補助する筋肉に大きな負担をかけることになります。しかも、前傾姿勢では重力で前に落ちようとする頭を後ろに引っ張り上げるように筋肉がはたらき続けなければならないので、筋肉が慢性的に疲労して肩こりの原因となります。
【上半身の後傾】
座面の前方にお尻をずらし、背もたれに倒れかかるような座り方でパソコンや自動車の運転、テレビ視聴など前方を注視する状況では、視線を前方に合わせるために常にアゴを引いた状態でいる必要があります。そのため、それに関連した筋肉の持続的な負担が肩こりの原因となります。
【肩の位置】
①高さ
肩こりを訴える人の肩の高さには、左右の差がある場合がほとんどです。
この理由はいくつかあり、
・土台の骨盤、腰の傾きがそのまま肩の高さの違いとなっている場合
・背中の傾き・背骨の側弯による場合
・上半身の筋肉の緊張・収縮状態の影響
などがあげられ、それぞれに応じた対処が必要となります。
なお、上半身の筋肉の緊張・収縮状態については、高い方の肩が引き上げられているだけでなく、逆に低い方の肩が引き下げられている場合もあるため、肩甲骨周囲や背中の筋肉の状態も観察して対処するのがコツです。
②ねじれ(前後)
いわゆる「巻き込み肩」と呼ばれる肩が前に出て、内側に巻き込むような状態です。
スマホを使用する際の姿勢であり、長時間使用していると固定化されやすいため、最近では「スマホ肩」と呼ばれることがあります。パソコンのマウスを毎日長時間使用している場合も同様の傾向が見られます。
肩が内側に巻き込まれると、肩甲骨が外側に引っ張られる状態となります。すると、頚椎と肩甲骨をつなぐ筋肉が引き伸ばされ続けるような状態となり、肩の張りとして自覚されやすくなります。また、腕の重さを支えるために、わきの下から二の腕の後ろ側にかけての筋肉がはたらき続け、固まってしまい、肩こりに影響している場合もあります。
*意識するだけではバランスは好転しない?
肩こりを好転させるため、正しい姿勢を心がけることは間違いではありません。ところが、一旦悪い姿勢が身についてしまうと、正しい姿勢を心掛けようとした時に、逆にその努力が苦痛になったり、どこか別の場所が痛み出したりして、すぐに元の姿勢に戻ってしまうということがよくあります。その場合、姿勢を支えるための筋肉に疲労がたまっていたり、筋肉が硬くなってしまって伸びなかったりして、筋肉が十分に働けない状態であることが考えられます。また、本来スプリングのような弾性で負担を分散させる背骨が硬くなり、負担をうまく吸収できない場合もあります。バランスの取れた正しい姿勢を心がけて実践するためには、まずは身体のコンディションを整えなければなりません。筋肉の疲労、硬さ、背骨の弾力性等、まずはこれらを回復させてから、正しい姿勢を心がけるようにすれば、無理なく実践できるようになります。
<バランスの肩こりと針灸療法のポイント>
バランスの肩こりの場合、肩こりを感じている部分にばかり施術の重点を置いても、身体のバランスが安定していなければ効果は一時的となり、負のスパイラルからの脱却はできません。
従って、まずは身体がどのようなバランス状態であるか観察して肩こりへの影響を考察し、そのバランスから整えます。身体の下側(土台側)から順に整えるのがベストですが、どの部分のバランスが現在の肩こりに一番影響しているのかが重要なため、必ずしも土台側からとは限らず、まずは影響の最も大きい部分から整え、肩こりの変化を調べてそれから次に影響している部分と、順番に施術して好転させていく方が実際的です。例えば、猫背で巻き込み肩だった場合、猫背が一番肩こりに影響していそうであれば、まずは背中のバランスをととのえて猫背の影響を抑え、それから巻き込み肩への対処をします。
また、バランスの肩こりの場合、やや長期的なスパンでバランスを整えながら解消(再発予防)を目指すことをお勧めします。とくに土台からバランスを整えていくことが大切です。身体のバランスがある程度に整ってくると、正しい姿勢を無理なく実践でき、体操やストレッチなどの自己ケアで肩こりが落ち着くようになります。
【目次】
→はじめに
→(1)疲労の肩こり
→(2)緊張の肩こり
→(3)バランスの肩こり
→(4)3タイプの肩こりの相関関係
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