継続治療が必要な場合と進め方

《継続した治療が必要なのはどんな場合?》
『どのような重症者でも一発で治す!!』
もし、私がこのような自信に満ちあふれた治療家になることができたなら、それはどんなに素晴らしいことだろうかと思います。
しかし、残念ながら、現実はそうとは限りません。
もちろん、私自身、「一発」とは言わずとも、できるだけ少ない治療回数で、短い期間で回復していただけるよう、日々努力をしているつもりです。
また、これまでにも、時には自分自身がびっくりしてしまうほどの「一発」の効果を挙げてしまうことがあったのも事実です。
ですが、針灸という手段を用い、「自然治癒力」に頼り、治療を行っている者として、やはり「一発」の限界はあると考えます。

 

その理由は、もちろん、自身の至らない点もあるだろうと思いますし、針灸療法の限界、人間の治癒力の限界など、様々でしょう。
ですが、常に「一発」を狙った治療を行っていると、治療者・受療者の双方にとって、結果的に最良の利益になるとは限らない・・・というのが私自身の経験から得た結論です。


そこで重要になってくるのが『継続的な治療の進め方』です。
極論かもしれませんが、私は、症状の重い人に対して、能な限りで最大限の結果を残せるかどうかは、治療者の技術もさることながら、『継続的な治療の進め方』が上手くできるかどうかに左右される・・・と考えております。


1回1回の治療効果は症状を全快させるのに不十分でも、1回1回の治療効果をうまく積み重ねることができれば、「雨だれ、石を穿(うが)つ」の如く、時には想像以上の結果を出せることも少なくありません。


では、「継続的な治療」は、どのように進めていけばよいのでしょうか?

 

「継続的な治療」とは、ある一定の間隔を設けて、治療を継続的に行っていくことですが、重要なのは、最終的に、それが良い結果に結び付かなければなりません。


そのために求められるのは、一回の治療を行ってから、次の治療を行うのにベストな『タイミング』の見極めです。


その『タイミング』を見逃すと、治療の蓄積的な効果が減ってしまう場合もありますし、必要以上に間隔を詰めて治療を行っても、大局的にはあまり意味のないこともあります。


「間隔を詰めて治療回数を沢山行えばそれだけ早く治るのでは?」
と思われている人も多いかもしれません。
しかし、ベストな『タイミング』は、一回一回の治療間隔のみならず、治療を開始してから、最終的に納得のいく結果が得られるまでの期間(日数)までも
総合して見極める必要があります。


それでは一体、その間隔は何日くらいがベストなのでしょうか?
一般によくありそうな例をあげて説明してみましょう。
【例1】
Aさん:治療間隔がランダム(不規則)なため効果が挙がらない。
キーポイント→症状の出現・悪化と治療のタイミング
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例1:Aさん⇒具体的な治療間隔のアドバイスがない場合。
慢性的な疲労性の腰痛を抱えている。
治療を受けると、しばらく楽な状態が続く。
毎回、先生は「痛くなったら、また来てください」と言うので、疲労がたまって、痛みが強くなり、我慢ができなくなってきたら、治療を受けるようにしている。
治療を受けてから、腰は毎回だいたい同じくらいの期間で痛くなってくる。
通常は、前回の治療から2週間くらいで痛みが気になり始め、1ヶ月くらい経過した頃にピークとなり、次の治療を受けている。
また次の治療を受ければ楽になるからいいのだが、やはり欲を言えば、もう少し痛みが気にならない期間が長くなってほしいし、時々はメンテナンス的にお世話になるのは良いとしても、やはり最終的には腰痛になりにくい状態(体質)にまでなってほしいと思う。
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当院では、Aさんのように、痛みが気になったり、我慢できなくなったりした段階で来院し、治療を受けるという人も少なくありません。
それは各個人の健康に対するスタンスに基づくものですので、当院としても、一回一回のニーズに応えることに全力を尽くし、定期的な通院を強引に勧めるつもりはありません。
しかし、
Aさんのように、例えば普段に症状が気にならない、自己ケアで痛みなどコントロールできるレベルまでにしたいなど、「一歩進んだ段階」に持っていきたい場合、計画的に治療間隔の目安を定めて治療を進めることをお勧めします。
具体的にはですが、治療の間隔が何日(何週間)くらいかというのは個人によって異なります。
そこで、どのようなことを目安にして治療の間隔を定めればいいのかを説明しましょう。
例えば、治療によって痛みなどの症状が改善されても、日常の疲労が徐々に蓄積されるなどすれば、それに比例して痛みなどが再び発生する可能性が高まり、それがある一定のレベルを超えたとき、再び痛みなどの症状が出現することになります。
但し、その期間には個人差があり、早ければ1週間ほどで発生して、2週間ほどでピークとなったり、Aさんのように1ヶ月くらい経過してピークに達するする例など、実際には様々なケースがあります。
このAさんのようなケースの場合、継続的な治療の目的は、日々の疲労の蓄積、持ち越しを防いで、痛みの発生とピークの時期を徐々に伸ばしていくことにあります。そのため、痛みなど、普段の症状が出現し始めた頃を次の治療を行うタイミングとして治療の間隔を設定します。
従ってAさんの場合、
2週間で痛みが発生し、1ヶ月くらいでピークに達していますので、最初は、前回の治療から10日~2週間目くらいに次の治療を受けるようにします。


では、今後ずっとそのペースで治療を受け続けるのかと言うと、そうではなく、例えば10日~2週間に1回のペースを2~3回続けて、その期間では痛みを感じることがほとんどなくなってきたら、今度は治療の間隔を3週間くらいに伸ばし、また2~3回様子をみます。
3週間の間隔でも痛みを感じなくなってきたら、今度は間隔を1ヶ月に伸ばして、その1ヶ月の間に痛みが気になるかどうか様子をみます。
1ヶ月過ごしてみてあまり痛みが気になることがないようでしたら、
後は月に1度、メンテナンス的に治療を受ければよいでしょう。


Aさんの場合、
以前も月に1回の治療でしたが、メンテナンス的な治療は痛みがピークに達してからの治療ではないので、同じ1ヶ月の間隔でも、つらさは全然ちがうと思いますし、痛みが少ない分、より予防的・根本的な内容の治療を行うこともできます。


何よりも、このレベルになってくると、普段、疲労が蓄積した時や、痛みを感じ始めた時でも、自身で体操やストレッチ、入浴などを行うことによって、疲労や痛みのコントロールが比較的容易になることが、Aさん同様の方式で治療を継続した方々に共通するポイントです。


【例2】
Bさんの例:治療間隔に変化がない。
キーポイント→決まった間隔で通い続ける必要はあるか?
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例2:Bさん⇒治療間隔が一定。
坐骨神経痛の痛みから何とか解放されたいと思い、ある針灸院の治療を受けてみようと思いました。
先生には「治るまで週1回で治療を続けて下さい。」と言われました。
これほどの状態だと、1回治療したくらいですっかり治るものではないというのは分かるけど、いったいどの位の期間、通い続ければいいのでしょうか?
それから完全に治るまでは、状態が良くなってきても週1回でなければならないのでしょうか?
できれば痛みが治るまでお世話になりたいと思ってはいますが、時間もお金も決して余裕がある訳でもないので、治療期間と回数の目安だけでも教えてもらえれば、助かるのですが・・・
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Bさんの不安の原因のひとつは、状態が改善してきているという判断を、どのようにすればいいのか分かりにくい・・・ということではないかと思います。

 

週1回の治療をコンスタントに行っていれば、最初のうちは次の治療が待ち遠しい位かもしれませんが、治療の効果がうまく作用するようになってくれば、ほとんど痛みに苦しむことなく日常を過ごすことができるようになるでしょう。
しかし、治療の間隔を延ばした時、または治療に通うのをやめたとき、週1回の治療を受けていた時のように2週間、3週間を過ごすことができるのか?
まるで未知の領域に踏み込むようで、とても不安になると思います。
こうなると、精神的な依存性や、経済的な負担が不必要に高まってしまう可能性もあり、治療院にとって商売的にはいいかもしれませんが、それが本当に患者さんの為になるかどうか、疑問がぬぐい切れません。


Bさんのようなケースの場合、私の考える治療プランは以下の通りです。
まず、最初は1週間に1回というのは同じです。
症状が重ければそれなりの期間と回数を必要とするのは仕方ありません。
しかし、針灸治療で効果を出せる状態であることを前提として、回数に個人差はあるものの、1週間に1回の治療を行っていれば、数回の治療で、1週間の間、痛みが気にならなくなってくると思います。
そうしたら、次の段階として治療の間隔を10日~2週間に延ばします。
大体ですが、通常は3回~5回くらいで次のステップに進むことを目標とします。
初めの段階の治療で、1週間では痛みが出ない状態になっていたかもしれませんが、間隔を空けてみると、10日くらいすると痛みが気になり始めるかもしれません。
この間隔(10日~2周間)で数回治療を行い、治療までの間に痛みが気にならなくなったら、次は3週間~1ヶ月と間隔を延ばして数回治療を行って経過を観察します。


もちろん、治療の段階が進むにつれて、自分でできる体操などのリハビリを徐々に取り入れて、治療の間隔を維持できるように工夫をしていくと、より良い経過をたどる可能性が高まります。
(早すぎる段階でのリハビリは、かえって状態を悪くさせることもあるので、注意が必要です。


この辺のタイミングを見極めるのも治療者の重要な役割です。)
最終的には1ヶ月の間、経過を観察してほぼ苦痛を感じられないようでしたら、『卒業』ということにしても問題ないと思います。


なお、経過が順調であれば次のステップに進むまでの治療回数は減らしても構いません。
初めの段階では症状が重くても、一度治る兆候が現れ始めると、後はトントン拍子で治療が進んでしまう場合も少なくありません。


つまり、初めの段階で「負のスパイラル」を脱することさえできれば、後は自然の勢いに任せ、治療はその手助け(方向修正)をする程度で十分となります。
あとはメンテナンス的に時々治療を受けるか、再発の気配のある段階で治療を受けるかなど、個々の自由にお任せいたします。
(もちろん再発予防の治療を受けるタイミングなどの目安はアドバイスいたします。)

 

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