ねちがえは、起床時または起床後に生じた、頚(くび)や肩、背中などの痛み、動作制限(動かしにくい・動かせない)のことです。就寝時以外にも昼寝や居眠りの際などでも起きることがあります。
症状の種類とレベルは軽症~重症まで様々で、ごく軽症であれば起床時の違和感程度で、半日もすればなくなりますが、重症になると、痛みで首をほとんど動かせないようなレベルになってしまいます。痛みは、じっとしていても痛い場合や、動かす際に痛む場合などがあります。
動作制限は首をほとんど動かせないものや、ある方向に動かせない(他の方向なら動かせる)、首がまっすぐにならない(頭が傾いている)、肩・腕が挙げられない場合などがあります。
また、寝違えの症状は、起床時すぐにピークの症状を自覚するタイプの他、起床時には多少の違和感程度だったものが、時間の経過につれて痛みや動作制限が増すタイプなどがあります。
寝違いの原因でまず挙げられるのは、寝ているときの体勢(姿勢)が悪かったということです。
特に頭の位置(=首の角度)が悪かった場合です。
・枕の高さが合わない。
・ソファーなど不安定な場所で寝た。
・座った姿勢での居眠りの後。
・ホテル・旅館・親類宅などでいつもと違う布団・枕で寝た。
・・・など、いつもに比べて睡眠時の体勢がうまくできなかった場合に特に寝違いを起こしやすくなります。
ちなみに、中国語では寝違えのことを『落枕』といいますが、「頭が枕から落ちる=落枕」つまり、睡眠中の姿勢(頭の位置=首の角度)が悪いために起きるとされています。
睡眠中の周囲環境も寝違いの発生に関与します。
例えば、明け方に冷え込んだときに首や肩などを冷やしてしまうと寝違いになりやすくなります。また、季節の変わり目、天気の変わり目など、気温、湿度、気圧などに変化が起きやすい時期になると、寝違いを起こす人が増えるのも特徴で
くび・肩こり・背中の筋肉疲労・緊張が強い状態では、寝違いが引き起こされやすくなります。体調面では、飲酒後(特に深酒)の睡眠で寝違えしやすい傾向があるようです。また、寝冷え、風邪気味の時なども挙げられます。その他、睡眠の不調(眠りが浅いなど)やストレスなども関連があると思われます。
多くの場合、上記した①②③の原因が単独で寝違いを引き起こすというよりも、①②③が複合した際に、寝違いが引き起こされやすくなります。
寝違えた時、寝違えた部分はどのような状態になっているのでしょうか?
一番多いのはこのタイプだと思います。睡眠中、首や肩周囲の筋肉に無理な負担がかかり、筋肉を傷めてしまった場合です。首を動かした際の痛みなどがあります。
睡眠中、頚椎部に負担がかかり過ぎ、ねんざ、ムチウチのような状態になった場合です。首がほとんど動かせないような状態になったり、手や背中などにシビレを感じたりした場合はこのタイプも考えられます。比較的重症です。
寝違えの発生する状況は様々です。ですが、ほとんどの場合で共通するのは、日常から寝違いを起こした場所に負担がかかりやすいような身体の状態であったことです。つまり、首や肩・背中などの上半身のバランス(姿勢)や、筋肉やスジの疲労・緊張持続によって、特定の部分(寝違える部分)へ負担が集中することが、寝違い発生の潜在的原因になっていると考えております。
近ごろ、巻き込み肩についての話題を目にすることが多くなりました。長時間スマートフォンを持ったままの姿勢でいると、肩が内側に巻き込まれた状態がクセとなり、様々な体調トラブルの原因となります。そして、この巻き込み肩によって寝違いが繰り返しやすくなる場合があります。
肉離れ・スジ違いタイプの寝違いを起こしやすい筋肉は、頚椎と肩甲骨をつなぐ筋肉に起きやすい特徴があります。巻き込み肩になると、肩甲骨は常に身体の外側に引っ張られた状態になってしまうため、それに伴って頚椎と肩甲骨をつなぐ筋肉は常に引き伸ばされているような状態となります。そのような筋肉の緊張(張力)が常に高まった状態にある時、寝違い(スジ違い)は引き起こされやすくなります。従って、寝違いを繰り返しやすい場合で巻き込み肩の状態である場合は、巻き込み肩の調整を行うことで寝違いを防ぐことができます。
寝違いと言うと一般にイメージされやすいのは首の寝違いですが、たまに背中の寝違いを訴えて来院される方もおります。特に肩甲骨の内側部に多いです。やはり、寝ている時の姿勢や環境、体調などの影響を受けて背中の筋肉を傷めてしまったため生じたものです。腕(肩関節)を動かした際に痛むなどの特徴もあります。背中の寝違えに関しては、以下のページも参考にしていただけます。
→肩甲骨の痛み(背中の痛み)
まず、すべてに共通するのは、痛めた部分を無理に動かさないことです。起きた直後はあまり痛まなくても、時間が経つにつれて痛みが強くなる場合もあります。動かすときは動かせる範囲で少しずつ徐々にです。これ以上動かせないと思ったら無理はしないことです。また、痛めた部分を押したり、もんだりするのもよくありません。無理に動かそうとしたり、もんだりした結果、後から状態を悪化させてしまうこともありますのでご注意ください。また、痛めた部分が熱を持っている(他と比べて熱い)場合は、湿布などで冷やします。
但し、首がほとんど動かせない状況や、手や背中にシビレや電気痛を感じるようであれば、まずは整形外科への受診をおすすめします。
寝違えは基本的に筋肉やスジが損傷した(傷ついた)状態なので、傷めた部分に負担をかけないよう気をつけてさえいれば、自己治癒力によって時間の経過とともに修復され、痛みや動きの制限も改善されるはずです。大抵のものは2~3日から1週間くらいで自然に落ち着くのではないかと思います。しかし、1週間以上経過しても痛みや動作制限が回復しない、もしくは同じ場所の寝違いを繰り返すような場合、自己治癒力を妨げる要因や寝違いが引き起こされやすい状況が残っている可能性があります。生活での習慣や睡眠環境の問題の他、首や肩・背中などの寝違えた部分や身体全体のコンディションに問題がある場合もあります。それらの要因を探し出し、その影響を抑え、取り除くことが寝違え回復の原則であると考えております。
寝違えは基本的に筋肉やスジが損傷した(傷ついた)状態と考え、それらの修復がスムーズに進むようにさせることが第一となります。
そもそも寝違いは、寝違いで傷めてしまう部分が以前より慢性的に負担を受け続けていた結果、あるきっかけで損傷が生じるものと考えております。
また、痛みが強くなったり、動作が制限されたりするのは傷めた部分に余計な負担がかかり続けていることが原因です。
そこで、まずは寝違えた部分に対する負担を軽減させることが、痛みと動作制限を軽減させ、修復を促すために必須であると考えております。
実際には、主に寝違えた部分の上下で緊張の強い部分を探し、それを緩めて負担を軽減させます。
寝違えの回復は基本的に組織の損傷の修復をもって完了されると考えますので、キズが治るのと同様、少なくとも2~3日以上の経過後に痛みや動作制限がなくなれば、とりあえずは回復したものと考えます。
しかし、痛みや動作制限の改善が不完全であったり、痛みや動作制限が改善されてから期間を置かずに寝違えが再発したりするようであれば、次項の要領で再発防止の施術をします。
寝違えてから相当の時間が経過しているにもかかわらず、痛みや動作制限が改善されきらない場合、
まず、寝違えによって傷めた部分の修復を妨げる要因は何であるかを探ります。
但し、寝違えた部分だけではなく、範囲を広げて探る必要があります。首であれば背中、背中であれば首や肩などのバランスや疲労の状態などに注意して施術します。
また、血液・リンパ系循環などの全身的なコンディションにも気を配ります。
次に、寝違えを繰り返してしまう場合、寝違いを起こす部分に対して周囲からの負担が慢性的にかかりやすい状態ではないかを疑います。これは、睡眠時だけではなく、日常生活の様々な場面での負担を考慮します。特に上半身のバランスには注意が必要です。周囲のバランスを整え、寝違いを起こしやすい部位に対する日常・睡眠時の負担を軽減させることで、寝違いの再発を予防します。
その他、睡眠時の環境を見直す必要もあると思います。
Q:寝違いは枕が悪いせいで起きるのですか?
A:枕を変えれば寝違いが起きないとは限りません。
確かに、枕の高さや材質が合わないなど、枕が寝違いを繰り返す原因になっていることもあります。枕を変えてから寝違いを起こさなくなったという例もあります。しかし、残念ながらそうではない例もあります。その場合、やはり身体側のコンディション(疲労・血行など)や枕以外の睡眠環境(布団・室温・服装など)の改善も考える必要がありそうです。
余談かもしれませんが、膝の寝違えというものもあります。首や背中の寝違えと同じで、朝起きると膝が痛くなっているというものです。こちらは膝痛のページで解説してありますので、よろしければそちらをご覧ください。
→膝痛のページへ
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