ごあいさつにかえて:初めての「針」

誰でもどうしようもない痛みに悩まされるようになった時、一体どうすればいいのか迷われると思います。私にも同様の経験がありました・・・
・えっ、はり…?
私の人生において、針灸との初めての接点(?)は高校生1年生の時でした。高校入学と同時に柔道部に入部し、毎日練習に励んでいたのですが、高校1年生の秋頃、なぜか腰痛に悩まされるようになってしまいました。当時通っていた町道場の先生に相談すると、「針がいいよ」とアドバイスを下さり、その先生が足の痛みをよくしてもらったという針灸院の電話番号を教えてもらいました。
しかし、当時の私にとって「針」とは別次元のモノで、「えっ、はり?」と戸惑ってしまったのが正直なところです。その時は迷った挙句に結局その針灸院には行かず、腹筋・背筋運動をしながら何とか騙し騙し練習を続けていたのですが、高校2年生になってからも腰痛は引きずったままでした。
・整体で良くなった…
高校2年生になってから柔道部顧問の先生が変わったのですが、その先生も学生時代にひどい腰痛を経験されており、月1回は昔から世話になっている整体院に通っていました。顧問の先生は私が腰痛に悩まされていることを知って、練習後に私の腰をケアしてくれることになりました。先生はもう長く整体に通っているためか大体の手順は覚えており、非常に痛かったのですが、やってもらった後は足腰が非常に軽く、回数を重ねるごとによくなっていくのが分かり、回復に伴ってウエイトトレーニングも併用して肉体改造にも取り組み、半年後には痛みがほとんど気にならない程にまで回復しました。
・進路を決める…
高校三年生になって本格的に進路を決めなければなりませんでしたが、腰痛に悩み、そして克服した経験から、人間の身体に関わった仕事をしたいと漠然と考えていました。そして色々と迷った挙句、なぜかあのとき「えっ、はり?」と思った針灸の大学を選びました。針灸の大学を選んだのは、元々針灸のベースとなる東洋医学に興味があったからです。整体の方にも興味があったのですが、整体の場合、教育や制度などが整っているわけではないので、国家資格であり教育も整っている針灸を選んだのでした。針灸の学校といえば、ほとんどは専門学校ですが、大学を選んだのはウエイトトレーニングを通じて、スポーツや身体のケアには科学的な理論も重要であるということを経験し、大学なら科学的な面からも東洋医学を学べると思ったからでした。
・初めての「針」
私が生まれて初めて「針」を打ってもらったのは大学入学後まもなく、柔道部の先輩(4年生で免許保有者)に膝の痛みを施術してもらった時でした。仰向けに寝て膝の下辺りに「トントン」と感じたかと思うと、先輩が一言「痛いか?」「私:えっ、もう刺したのですか!?」・・・先輩の打ってくれた針はちっとも痛くなく、その後も、約1時間の施術中には何本もの針を打たれたのですが、私は気持ちよくなってすっかり眠りこけてしまったのでした。目を覚ますと先輩がニコニコしながら「先輩:どうや?ぐっすり寝むとったなー」「私:すいませんっ、眠ってしまいました。えっ、もう終わったのですか!?」「先輩:膝動かしてみい」・・・私は立ち上がり、半信半疑で膝の屈伸をしてみると、膝を曲げた時の痛みは見事に消えていたのでした。「私:針って効くんですねー。思わず眠ってしまいましたけど、もっと痛いものかと思ってました。」「先輩:実習のときイビキいて寝てる患者さんは沢山いるよ。」・・・高校生の時、腰痛で顧問の先生に散々お世話になった時の印象から、施術とは歯を食いしばるくらいの痛みに耐えなければ効かないものだ・・・という先入観が出来上がってしまい、針灸もその部類だと思っていました。また、あの髪の毛のように細い「針」を刺しただけで痛みが消えるというのも不思議そのものでした。

 あれから様々な紆余曲折を経て現在に至っているわけですが、私が高校生の時に感じた「えー、はり?」という感覚は針灸を経験したことのない人ならば誰もが感じうる感覚だと思います。針灸に対する「痛そう」「恐そう」という一般的な印象を完全に拭い去ることは非常に難しいと思います。しかしながら、そのような不安を抱えつつも針灸院の門を叩く人が後を絶たないのは、針灸というものにはそれだけの実績があり、また期待されているという事でもあると思います。私は今後いつまでもこの「初めて」の感覚を忘れずに、不安と期待を抱きつつも当院の門を叩く方々に接していきたいと考えております。

どうぞよろしくお願い申し上げます。泉心堂治療院・院長・井出治承
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